研究概要 |
4-メチルウンベリフェリン(MU)を連日3か月間マウスに摂取させ,ヒアルロン酸(HA)の合成の抑制されたマウスを作製した。最初に,マウスの各種臓器を採取し,そのHA含量を定量したところ,脳を除くすべての臓器のHA含量がコントロールマウスの7割ほどにまで減少していた。皮膚の肉眼的観察の他,組織検索及び皮膚マルチ解析装置にて皮膚角質水分量,経皮水分蒸発量を定量化したところ,皮膚は全体に乾燥し,萎縮性で,色素沈着及び脱出の混在を認めた。しかも皮膚の角質水分量の減少とメラニン色素の減少も伴った。また,マウスの中には足を引きずる,いわゆる関節症の症状を呈するものもおり,ヒトの皮膚の老化の症状と類似の所見を呈していた。また,このマウス皮膚に創を付け,HAの減少による瘢痕形成への影響を解析したところ,著明に瘢痕形成を認め,この部でのI型コラーゲンの発現も促進していた。更に,このマウスとコントロールマウスとの遺伝子の発現を網羅的に解析して比較したところ,瘢痕形成に関わるものとしてはI型コラーゲン遺伝子及びVII型コラーゲン遺伝子の及びVII型コラーゲン分解酵素のMMP-2,MMP-9の発現が優位に増強していた。VII型コラーゲンの減少が瘢痕の特徴のひとつであるが,VII型コラーゲン遺伝子がむしろ促進していたことは,分解酵素MMP-2,MMP-9の発現促進に対する代償的反応と考えた。HAが瘢痕を形成しない創傷治癒,いわゆる胎児創傷治癒にとって重要な因子であるが,MUによって,そのことを更に裏付けることが可能となった。
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