研究概要 |
皮膚腫瘍の免疫療法を行う際に、抗原提示細胞である樹状細胞のアポプトーシスを抑制することは重要と思われる。アポプトーシスの経路の主なものとしては、細胞膜においてはTGF-βsuperfamily受容体やFas(CD95)分子を介する刺激、細胞内においては、p53の調節異常、DNA断片化に関与するcaspase群、さらにはミトコンドリアを介する経路にかかわるBcl-2 fimily(Bcl-2/xl,Bax/Bak)などがあげられる。樹状細胞については、アポプトーシスに関与する分子としてFas,Fas ligand,caspase 3, caspase 8などが報告されている。本年度における成果としては、MoDCを通常の樹状細胞療法で用いるのと同条件、すなわち自己血漿および無血清培地を用いて末梢血CD14陽性細胞からGM-CSFおよびIL-4の存在下で誘導し、IL-1beta,IL-6,TNF-alpha,PGE2を加えて刺激・成熟させた後の自然経過によるアポプトーシスの程度とそれに関与するcaspase群の発現を解析した。細胞のviabilityは、刺激2日後までは90%以上であったが、3-4日後には60-70%と低下し、さらに5日後には50%となった。アポプトーシス陽性細胞についてみると、刺激後4日までは陽性細胞は10%以下であったが、刺激後6-8日では約70%と著明に増加した。刺激後の樹状細胞の活性化を検討したところ、刺激後2日目からCD86およびHLA-DR抗原の発現増強がみられた。刺激後6日以降は、同抗原を強く発現しているグループと発現の現弱したグループの2つにわかれ、刺激後の時間が長くなるにつれて後者の割合が増加した。このアポプトーシスにおいて関与するcaspase群の相対濃度を測定したところ、caspase-2,-3,-7,-8のうちでcaspase-2のみが刺激後5日目から有意に増加した。現在、caspase群およびBcl-2 family群のsiRNAを設計ないし購入して、樹状細胞のアポプトーシスに影響があるか否かを検討中である。
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