表皮特異的ケモカイン過剰発現マウス(Tgマウス)に関しては、2種類のマウス、すなわちTARC(CCL17)TgマウスとCTACK(CCL27)Tgマウスを作成した。 TARC Tgマウスでは、臨床像や皮膚組織所見でnon-Tgマウスと比べて明らかな違いはみられなかった。そこでオキサゾロン(OX)とFITCによる接触過敏反応(CHS)(単回惹起のacute CHSと繰返し惹起のchronic CHS)を行ったところ、TgマウスではTh1型CHS反応は抑制され、Th2型CHS反応は増強された。皮膚浸潤CCR4陽性細胞数はTgマウスで有意に多かった。OX chronic CHSではTgマウスで肥満細胞数が増加していた。TgマウスではIL-4 mRNA発現が増強し、IFN-γ mRNA発現が減弱していた。Chronic CHSではTgマウスで血清中IgE値が有意に増加していた。以上より、TARCはそれのみでは炎症を引き起こさないが、一旦炎症が起こるとTh2優位な状態を誘導して炎症を修飾すると考えられた。その際、肥満細胞数、IgE濃度の増加といったアトピー性皮膚炎(AD)に似た状態がみられた。 CTACK Tgマウスでも、臨床像や皮膚組織所見でnon-Tgマウスと比べて明らかな違いはみられなかった。そこで同様にOXとFITCによるCHSを行ったところ、TgマウスではFITC chronic CHS(Th2型反応)でのみ耳介腫脹が増強した。このとき惹起した皮膚に浸潤する肥満細胞数、CCR10陽性細胞数、CCR4陽性細胞数はTgマウスで増加した。また、末梢血中IgE濃度もTgマウスで有意に増加した。以上より、CTACKはそれのみでは炎症を引き起こさないが、惹起された炎症部位にCCR10陽性・CCR4陽性細胞を引き寄せることにより、ADのようなTh2型の皮膚炎の病態に関与している可能性が示唆された。
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