正常および強皮症培養線維芽細胞を用いて免疫ブロット法、免疫沈降法にてトロンボスポンジン-1(TSP-1)蛋白の発現量を検討したところ強皮症線維芽細胞において発現が亢進していた。Northern blot法にて強皮症線維芽細胞においてTSP-1 mRNAの発現が亢進していた。皮膚組織を用いた免疫染色法にて強皮症線維芽細胞におけるTSP-1の発現亢進がin vivoで確認された。また強皮症線維芽細胞ではNorthern blot法にてTSP-1 mRNA stabilityが亢進している事が示され、またTSP-1遺伝子プロモーター領域を用いたCAT assayにて強皮症線維芽細胞ではTSP-1遺伝子転写活性は亢進していなかった。TSP-1の過剰発現はI型コラーゲン過剰発現、Smad3のリン酸化亢進と相関した。また正常線維芽細胞においてTGF-β刺激にてTSP-1発現が促進され、強皮症線維芽細胞ではTSP-1の過剰発現はTGF-β中和抗体あるいはTGF-β1アンチセンスオリゴにて抑制され、autocrine TGF-β signaling(強皮症線維芽細胞自身が分泌するTGF-βが活性化してTGF-β情報伝達が亢進した結果)によるものと考えられた。またTSP-1中和抗体あるいはTSP-1アンチセンスオリゴにて強皮症線維芽細胞コラーゲン発現亢進、Smad3のリン酸化亢進が抑制され、強皮症線維芽細胞におけるautocrine TGF-β signalingにTSP-1過剰発現が関与していると考えられた。 さらに強皮症線維芽細胞におけるTSP-1発現亢進のTGF-β情報伝達系活性化への関与について明らかにするため、エレクトロポレーション法を用いて皮膚線維芽細胞にTSP-1を過剰発現した細胞(stable transfectants)を作成し、実際TSP-1を過剰発現しているか免疫ブロット法、Northern blot法にてTSP-1の蛋白質、mRNAレベルの発現量を検討するところである。
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