尋常性乾癬(Pso)は皮膚科疾患における代表的な慢性炎症性疾患であり、家族内集積性が認められることから遺伝的背景の存在が示唆されているが、原因遺伝子の解明には至っておらず、病因は不明のままである。しかしながら、PsoにおいてはいわゆるTh1型優位なT細胞の機能異常に関する報告が過去に多く、また結節性硬化症やクローン病等の他の自己免疫性疾患の合併があることから、発症の誘因にT細胞を介する自己免疫異常が関与するとする見解がある。そこでPsoにおけるCD4^+CD25^+制御性T細胞の機能を詳しく調べ、本疾患における制御性T細胞の機能異常が自己反応性T細胞の活性化を促し、病態を作り上げている可能性について検討を加えた。 乾癬患者と健常コントロール群の末梢血より調製した各々のCD4^+CD25^+制御性T(Treg)細胞を用いて、量的、質的な検討を行った。その結果、flow cytometryを用いた解析では乾癬患者群末梢血中に存在するTregの全CD4^+T細胞群に占める割合に健常コントロール群と比較して有意な差は認められなかったが、機能的に患者Tregには異常があることがin viroの系で判明した。すなわち、Tregとautologous CD4^+CD25T(Tresp)細胞を1:1の割合でallogeneicな抗原提示細胞と共培養すると、健常群のTregはTrespの^3H取込を約90%抑制したが、患者群のTregはおおよそ40%しか抑制効果を示さなかった。さらにTregとTrespの比を変えてTrespの増殖反応を50%抑制するのに必要なTregの細胞比を詳細に検討したところ、健常群のTregと同様の抑制効果を得るためには、数的に約8倍の患者群のTregが必要であることが明らかとなった。また、患者群のTregに抗CD3/CD28刺激を行うと、増殖に関して完全にanergicであった。これに対して健常群のTregが刺激に伴って中等度に増殖を示したことと比較すると、得られた結果がPsoにおけるTregの機能異常に関わっている可能性を強く示唆するものであると考えられた。
|