研究概要 |
がんを含めた種々の病態の形成過程を検討する上で重要だと考えらるTreg細胞や胸腺外分化型γδT細胞が、どのように神経組織とネットワークを形成しているかを検討した。以前から知られているTreg細胞またはγδT細胞マーカー分子の他に、3種(R1,R68,Y5)のヒトおよびマウス新規細胞表面分子を同定し、それらに対するポリクローン抗体または単クローン抗体を作製し、それら抗体と神経系細胞マーカー(GFAPやβIIItubulinなど)抗体を用いたメラノーマ組織やリンパ系組織の切片の染色による検討を行った。 1)Treg細胞及び胸腺外分化型γδT細胞特異的ボリクローン抗体または単クローン抗体の作製 CD4+CD25+T細胞(マウス、ヒト)と胸腺外分化型γδT細胞(マウス)のcDNAを用いたサブトラクション法で同定したR1,R68,Y5分子の抗原性の高い20アミノ酸程度の遺伝子領域を増幅させ、それをpDisplayベクターに挿入後BALB/c3T3(3T3)またはCOS細胞株へ導入し、それぞれの分子の一部のタンパク質を細胞表面に発現させた遺伝子導入細胞株を作製した(ヒト遺伝子導入細胞株を3T3hR1,3T3hR68,3T3hY5、マウス遺伝子導入細胞株をCOSmR1,COSmR68,COSmY5と命名した)。3T3hR1,3T3hR68,3T3hY5細胞株はBALB/cマウスに、COSmR1,COSmR68,COSmY5細胞株はラットに免疫することによって、それぞれの分子に特異的なポリクローン抗体を作製した。それぞれの細胞株で免疫された動物脾細胞をP3-X63ミエローマと融合することによりハイブリドーマを作製し、それぞれの分子特異的な単クローン抗体を現在作製中である(分子的に単クローン抗体作製が非常に困難を極め、あらゆる可能性の検討を行っている)。 2)メラノー組織またはリンパ系組織切片のTreg細胞または胸腺外分化型γδT細胞特異的ポリクローン抗体と神経系細胞マーカの二重染色による検討 B6マウスの皮下にB16細胞を移植した後、1,2,3,4週目の腫瘍、脾臓、腫瘍近傍リンパ節を採取し、それぞれの凍結切片を作製した。またヒトメラノーマ組織の凍結切片を作製した。それぞれの切片をR1,R68,Y5特異的抗体と抗神経細胞抗体(GFAPやβIIItubulin特異的抗体)との二重染色を行った結果、脾臓繊維膜近傍とリンパ関門付近で神経細胞とTreg細胞の接触が低頻度で観察されたが、メラノーマ組織内でそのような像は観察されなかった。今後は腫瘍ばかりでなく、アレルギーモデルマウスや自己免疫モデルマウスを用いても検討する予定である。
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