研究概要 |
本研究代表者は平成10年より色素性乾皮症など紫外線性DNA損傷の修復異常で発症する遺伝性光線過敏症の分子細胞診断を施行してきた。これまで348検体を解析し、108例の新規XP患者を見出した。この内100例はXP相補性群の確定が可能であったが、残り8例は各種試験を行うも群決定が困難であった。 これらのXP群未確定患者は軽度の光線過敏症状、色素異常があるものの神経学的異常はなく、細胞生物学的には不定期DNA成能は30%以下と著明に低下し、紫外線感受性試験では中等度感受性亢進、カフェイン添加で感受性の変化なしという結果であった。プラスミド宿主細胞回復能は正常の10~40%でありこの低下はXPA,B,C,D,F,G群発現ベクターを患者細胞に導入しても回復はみられなかった。細胞融合法による古典的相補性試験でも既知群は否定された。XPE群遺伝子変異は検出されなかった。これら結果から今回の群未知症例はXP診断は確かであるが、既知の群には属さない新しいグループである可能性がきわめて高いと考えられた。 未知因子同定を目的として体細胞ハイブリッド作成法による紫外線抵抗性マウス細胞のクローン化を試みたが浮遊細胞に対する正確な至適紫外線照射線量が判明せず現在も条件検討中である。 患者細胞、年齢・性を一致させた正常細胞のRNAペアを準備し、cDNAマイクロアレイ、miRNAマイクロアレイ解析を試みた結果ATM、CLSPN、FANCD遺伝子に発現低下を認めた。疾病細胞群で発現低下していたこれらの遺伝子とXP症状との関連は不明ではある。 今回の研究から、神経症状非合併で皮膚症状は軽度という共通のフェノタイプを持ち既知のいずれのXP群に属さない新規XP相補性群患者が本邦では稀ながら存在する可能性が示唆された。
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