研究概要 |
薬剤を抗原として認識するT細胞の特徴の検討 1.金による膿疱性薬疹患者1名およびカルバマゼピンによる薬剤過敏症候群の3名の末梢血から、各薬剤特異性T細胞クローンまたはラインを樹立し、そのフェノタイプ、ケモカインレセプターの発現、産生サイトカンを調べた。 2.樹立したT細胞クローン・ラインに発現しているケモカインレセプターは機能的かどうかを確かめるため、TAXSCANによって実際、細胞がケモカインによって反応するのかを確認した。 薬疹の患者における抑制機能をもつ細胞群についての検討 1.特に薬剤過敏性症候群の患者3名における経時的な末梢血のフェノタイプの検討から,病初期にはCD25陽性CD4陽性細胞が増加し,その後急速に減少することを見出した。また,この増加のピークと本患者におけるヘルペスウィルスの再活性化の時期はほぼ一致することから,この細胞は薬疹の発症に関与する他に,免疫抑制状態を誘導して潜伏しているヘルペスウィルスの活性化にもかかわっている可能性がある。 2.薬剤過敏性症候群の患者1名では,浸潤皮膚から大量のリンパ球を採取し得た。皮疹の軽快した約1ヶ月後に患者から単核細胞を採取し,皮膚由来のリンパ球をCrラベルして標的細胞とし,末梢単核細胞の皮膚浸潤リンパ球に対する細胞障害性を検討した。すると,対照患者であるアトピー性皮膚炎患者,乾癬患者においてはみられぬ皮膚浸潤細胞に対する細胞障害活性を認めた。皮膚浸潤リンパ球に対する細胞障害活性は再活性化したヘルペスウィルスが皮膚浸潤リンパ球に感染しているためである可能性があるため,このリンパ球のDNAを抽出して,ヘルペスウィルス群のゲノムの有無をnested PCR法にて検索したが,すべて陰性であった。この結果より,本患者では,薬疹の発症後に,自己反応性の細胞障害性T細胞が誘導されている可能性が示唆された。
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