免疫複合体の沈着は組織障害を来す急性の炎症反応を引き起こす。血管炎症候群、全身性エリテマトーデス、関節リウマチなどさまざまな疾患で、この免疫複合体による炎症が関与している。免疫複合体による組織障害は炎症細胞浸潤によって誘導され、その炎症細胞浸潤は多数のケモカインによって高度に制御された生体プロセスである。ケモカイン受容体であるCCR1とCCR5、およびこれらのリガンドであるCCL3がこの免疫複合体による組織障害にどの程度関与しているかを検討するために、CCR1、CCR5、CCL3の発現を欠くマウスにおいて、皮膚と腹腔内で逆受け身アルサス反応を誘導した。皮膚アルサス反応による浮腫は野生型マウスと比較して、CCR1ノックアウトマウスとCCL3ノックアウトマウスで有意に抑制されたが、CCR5ノックアウトマウスでは抑制されなかった。浸潤してきた好中球と肥満細胞数は、野生型マウスと比較してCCL3ノックアウトマウスおよびCCR1ノックアウトマウスで減少していた。これとは対照的に腹腔内アルサス反応はこれら変異マウスで抑制されなかった。CCR1とCCR5は共に腹腔内の好中球および肥満細胞上に発現していた。皮膚アルサス反応による、CCR1とCCR5の別のリガンドであるCCL5 mRNAの発現は野生型マウスと比較して、CCR5ノックアウトマウスおよびCCL3ノックアウトマウスで増加していた。一方、皮膚のCCL3 mRNAの発現はCCR1ノックアウトマウスとCCR5ノックアウトマウスで増加していた。これらの結果はCCR1、CCR5、CCL3は協調して皮膚アルサス反応を誘導しており、CCL3とCCL5の発現増強はCCR1、CCR5、CCL3が欠損した状態を補正しうることが示された。
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