研究概要 |
我々は、宿主免疫を効果的に活性化する抗原投与ルートの候補として、頭頸部領域(口腔粘膜、耳介)が有効であることを動物実験により示してきた(Wang, et al., Cancer Gene Ther.2001; Murakami, et al.J.Exp.Med.2003)。頭頸部領域のリンパ流は他の解剖学的部位と比較して豊富であることから、二次リンパ節への即時的移動が宿主の腫瘍免疫を効率良く惹起する可能性について検討した。C57BL/6マウス由来メラノーマ細胞株B16にホタル由来luciferase遺伝子を安定的に発現するluc-B16細胞を作成し、in vivo luminescence法により生きた個体内での細胞挙動を観察した結果、耳介接種では数分以内に頸部リンパ節への腫瘍集積を認め、足底接種による膝窩リンパ節への集積とは対照的であった。MRIによるGd(III)リンパ節造影でも同様のリンパ流量の差が観察された。luc-B16細胞ワクチンの耳介接種は腫瘍形成に抵抗性であるため(Murakami, et al.J.Exp.Med.2003)、親株B16細胞に対する耳介接種のワクチン効果について検討した。Naiveマウスは全例とも約10日で腫瘍を発生するものの、耳介接種ワクチンでは約30日後でも20〜30%の個体で腫瘍発生が見られなかった(p<0.001)。また、耳介接種ワクチンで腫瘍が発生した個体での腫瘍径も著しく抑制されていることが分かった(p<0.001)。これらの結果は、luc-B16細胞による初期の免疫反応が内在性のメラノーマ抗原に体するエピトープ拡散を示唆し、メラノーマ腫瘍に対するワクチン効果に寄与することが考えられた。 メラノーマに対する免疫療法を効果的に行なう上で癌部位周辺での免疫反応を惹起するサイトカインの供給も重要である。この観点から、新規サイトカイン(interferon-λ/IL-28)の効果を試験した。マウス骨髄よりinterferon (IFN)-λ cDNAをクローニングし、この抗腫瘍活性について検討した。IFN-λ受容体はB16細胞を含む複数の腫瘍細胞株で発現し、これらの細胞にIFN-λを強制発現させると細胞周期のG1/S移行を阻害し、アポトーシスを誘導する活性があることが判明した。現在、IFN-λの癌局所での役割について検討を進めている。
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