研究課題
基盤研究(C)
メラノーマに対する「がん抗原」の発見以来、がんワクチン療法に関する多くの臨床試験がなされてきた。しかしながら、メラノーマ患者を中心としたワクチン療法の臨床的応答性は決して高いものではなく、がんワクチン療法の限界すら暗示されている。本研究では、これまでの腫瘍免疫学の蓄積を踏まえ、ワクチン療法の改善すべきポイントを宿主因子と腫瘍側因子の両面から追求した。申請者らグループは、本基盤研究(C)において、上記のようなメラノーマの臨床的問題点について多角的にアプローチし、1)メラノーマの免疫感受性の回復・増幅方法の探索、2)宿主免疫を効率よく活性化する抗原投与ルートの検索、3)患者個体で播種したメラノーマ細胞が年余にわたり腫瘍形成に至らず休眠状態で存在し続ける(tumor dormancy)の宿主制御機構について、マウスモデルを用いて研究を行なってきた。その結果、1)メラノーマの免疫感受性の回復方法として、包括的な遺伝子発現の修飾方法が有効であり、分子標的薬として期待されているヒストン脱アセチル化阻害剤の利用が有望であること、2)頸部リンパ節領域に至るリンパ流量と宿主免疫活性化の関係を明らかにし、3)メラノーマのtumor dormancyに極少数め宿主内腫瘍細胞が制御性T細胞の調節下に維持されることが必要であることを明らかにした。さらに、新規IFNファミリーに属するIFN-lambda(IL-28/29)はNK細胞を活性化することにより、B16メラノーマ腫瘍の局所制御を可能にし、獲得免疫にも貢献することを示した。これらの研究成果は、メラノーマの進展に伴う宿主側因子の変化と腫瘍側因子の治療抵抗性を規定する要素を両面から考慮しなければ有効な治療成果に結びつかないことを強く示唆するものであり、今後はこれら改善に照準を絞った研究が必要であろう。
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