研究概要 |
乾癬は精神的ストレスにより増悪することが知られており、その病態に神経線維から分泌されるVasoactive intestinal peptide(VIP)などの神経ペプチドの関与が示唆されている。一方Vascular endothelial growth factor(VEGF)には血管新生作用と血管透過性亢進作用があることが知られており,乾癬においてケラチノサイトから分泌されたVEGFにより血管新生が誘導されることが明らかになってきた。そこで,VIP、サイトカインが表皮ケラチノサイト由来のVEGFの産生に与える影響について検討した。 1.培養ヒト皮膚表皮細胞(SCC cell line, DJM-1)と正常表皮ケラチノサイト(NHEK)にVEGFのmRNAが存在するかをRT-PCR法で確認したところ、DJM-1細胞にもNHEKにもVEGFのmRNAが認められた。 2.DJM-1細胞とNHEKをVIPで刺激し、上清中のVEGFを測定ELISA法で測定した。どちらの細胞でも、VIP刺激によって、上清中のVEGFの増加が見られた。 3.DJM-1細胞をVIP、サイトカイン(INF-γ、TNF)単独および、VIP+サイトカインで刺激すると上清中のVEGFの産生が増強した。IFN-γ+VIP刺激、TNF+VIP刺激では単独刺激に比較し優位にVEGFの産生が促進し相乗効果がみられた。 以上より、乾癬において、神経線維から分泌されるVIPや真皮に浸潤しているリンパ球から分泌されるサイトカインが表皮ケラチノサイトからのVEGF産生を促し、VEGFが血管に作用することで病変の形成、維持に関与している可能性が示唆された。
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