研究概要 |
乾癬は精神的ストレスにより増悪することが知られており、その病態に神経線維から分泌されるVasoactive intestinal peptide(VIP)などの神経ペプチドの関与が示唆されている。一方Vascular endothelial growth factor(VEGF)には血管新生作用と血管透過性亢進作用があることが知られており,乾癬においてケラチノサイトから分泌されたVEGFにより血管新生が誘導されることが明らかになってきた。そこで,VIP、サイトカインが表皮ケラチノサイト由来のVEGFの産生に与える影響について検討した。DJM-1細胞とNHEKはVIP刺激によって、上清中のVEGFの増加が見られた。さらに、DJM-1細胞をVIP、サイトカイン(INF-γ、TNF)単独および、VIP+サイトカインで刺激すると上清中のVEGFの産生が増強した。IFN-γ+「VIP刺激、ITNF+VIP刺激では単独刺激に比較し優位にVEGFの産生が促進し相乗効果がみられた。 次にDJM-1細胞をVIPで刺激し、経時的にVEGFのmRNAと細胞内VEGFの変化について検討した。DJM-1細胞はVIP刺激で、3時間後にVEGFmRNAの軽度の増加がみられ、12時間後から発現量が増加し、24時間後では明らかに増加が確認された。また、VEGFmRNAの発現をマイクロアレイでみたところ、VIP刺激後3時間後に増加が認められた。細胞内VEGFはVP刺激の3時間後と12時間後に増加がみられた。 以上より、乾癬において、神経線維から分泌されるVIPや真皮に浸潤しているリンパ球から分泌されるサイトカインが表皮ケラチノサイトからのVEGF産生を促し、VEGFが血管に作用することで病変の形成、維持に関与している可能性が示唆された。
|