悪性黒色腫は、世界的に増加傾向にあるが、高転移性で化学療法や放射線療法などの効果が低い難治癌であり、新しい診断法と治療法の開発が期待されている。本研究では、先端医科学研究所細胞情報研究部門が同定した機能が未だ不明な悪性黒色腫高発現遺伝子についてRNA干渉法を用いた発現抑制を行い、悪性黒色腫の細胞増殖・生存や浸潤・転移に関わる機構への関与を解明し、臨床応用の分子標的となるかどうかを明らかにする。悪性黒色腫特異的に高発現する分子は診断マーカーに応用しうるが、本研究で過剰な遺伝子発現の病態への関与が解明できれば治療にも応用可能である。DNAチップで同定した悪性黒色腫で高発現する分子FABP7、MMA1の機能を解析するため、まず、悪性黒色腫組織および細胞株における発現量と発現特異性の検討を行った。RT-PCRおよび定量PCRでmRNA発現を解析したところ、FABP7、MMA1は悪性黒色腫組織および細胞株において、高発現しており、RNAレベルでの発現特異性が確認された。その後、二重鎖オリゴヌクレオチドRNAを用いたRNA干渉法でmRNA発現抑制を行い、癌形成に関わる基本形質について機能阻害の影響を検討するため、細胞増殖能(WCT-1細胞増殖アッセイ)、細胞死(AnnexinV抗体を用いたフローサイトメトリー)、細胞遊走能(cell migrationアッセイ)、血管新生(VEGF分泌タンパクELISA)などについてのスクリーニングを行った。その結果、FABP7もしくはMMA1遺伝子発現を抑制した悪性黒色腫細胞株で、細胞増殖能、細胞遊走能が低下していた。これらの事より、FABP7およびMMA1は癌の悪性形質に関与しており、診断マーカーへの応用だけでなく、治療にも応用できる可能性が示された。
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