研究概要 |
メラノサイトの初期の発生に関わる因子のうち、転写因子であるMitfの役割に注目した。Mitfはチロシナーゼやtyrosinase rerated protein 1(Tyrp1)の転写因子であることが明らかとなっているが、Mitfの重要なもう一つの役割は発生初期のメラノサイト前駆細胞の生存の維持と考えられている。しかし、その作用機序に関しての報告はほとんどない。 前年度の本研究で、発生初期のメラノサイトのモデルとして、マウス神経冠細胞培養株,NCCmelb4M5を用い、Mitfの働きを知るためにRNA interference(RNAi)によりMitfのmRNAをノックダウンするとbcl-2の発現は変化しないがbaxの発現が上昇し細胞死に陥った。その時、Tyrp1の発現も減少したので、今年度はTyrp1をノックダウンし、Tyrp1のメラノサイト前駆細胞の生存の維持における役割を検討した。 マウス神経冠細胞培養株,NCCmelb4M5からTyrp1をノックダウンすると、同様にbcl-2の発現は変化しないがbaxの発現が上昇し細胞死に陥った。しかし、Mitfをダウンした場合より、細胞死に至る日数は一日遅かった。Tyrp1をノックダウンするとMitfの発現量が増加してきたので、このためTyrp1の転写が活発になり、ダウン効果が下がっているのかも知れない。 以上の結果から、Mitfは発生初期にTyrp1を発現させる事により、メラノサイト前駆細胞の生存を維持している可能性が示唆されたが、細胞死に至る日数は一日遅れる原因が何か、間接的に作用している可能性も視野に入れて検討する必要がある。 次に、NCCmelb4M5と分化段階の異なる2種類のマウス神経冠細胞株(NCCmelb4,NCCmelan5)からMitfをダウンしたところ、やはり細胞死を来したがTyrp1をダウンしても死なず、まだ予備的実験で得られた結果なので再現性を確認する必要があるが、分化段階によって異なる機序で細胞の生存を維持している可能性が示唆された。
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