尋常性乾癬(以下乾癬)は表皮細胞の分化異常による過増殖および炎症細胞の浸潤を特徴とする慢性炎症性疾患である。生来免疫を担う樹状細胞および表皮細胞の活性化によるT細胞との相互作用が病態形成に大きな役割を果たしていると考えられている。今回、われわれは乾癬皮疹部および無疹部における樹状細胞および表皮細胞の表面抗原の解析により樹状細胞のサブクラスおよび表皮細胞の活性化状態を明らかにすると共に、どのような微生物成分により活性化して炎症性サイトカインおよびケモカイン産生が引き起こされるかを明らかにするために研究を行った。免疫組織学的検討ではCD1aおよびCD83、CD207が正常および乾癬皮疹部の表皮ランゲルハンス細胞に発現が認められた。また、CD209は乾癬皮疹部の真皮浸潤細胞で発現が亢進していた。一方、CD208は真皮T細胞浸潤領域の樹状細胞のほかに表皮上基底層の表皮細胞に強い発現が認められた。また、IFN-gammaおよびPMAで刺激した培養ケラチノサイトにはHLA-DRと同様にCD208の発現亢進が認められた。CD208はライソゾーム画分と考えられる核周辺に粒状に局在が認められた。 乾癬皮疹部では顆粒層の欠如が知られているが、乾癬上基底層表皮細胞に認められたライソゾーム関連タンパクであるCD208の発現亢進は分化異常の結果とも考えられた。一方、抗原処理に関与すると考えられるCD208の乾癬表皮細胞での発現亢進は、皮膚浸潤T細胞への抗原提示細胞として機能している可能性も示唆した。 今後、乾癬の病因にせまると共に病態解明のために種々の微生物成分に対する表皮細胞の活性化および抗原提示能の解析が必要と考えられた。
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