研究概要 |
CD22はB細胞表面に発現する分子でB細胞の機能調節と免疫寛容の維持に関与する。今回CD22の発現量低下と加齢がB細胞の腫瘍化に及ぼす影響について高齢のCD22欠損マウスを用いて検討した。CD22欠損マウスは抗DNA抗体を産生することが知られているので腎臓の組織像を検討したが腎炎は認められなかった。CD22欠損マウス(6/11)において野生型マウス(1/7)より高頻度に腎臓にB細胞の巣状の稠密な浸潤像が認められた。CD22欠損マウスのうちの2匹では,腎臓に異型B細胞が巨大な集塊を形成しB細胞リンパ腫の組織像と考えられ,脾臓にもB細胞のびまん性増殖像がみられた。次に脾臓からDNAを抽出しPCR法を用いて,免疫グロブリンH鎖DJ領域の遺伝子再構成を調べた。その結果,異型Bリンパ球の浸潤を認めた脾臓ではmonoclonalityが認められ,リンパ腫であることが確認された。次にこれらのB細胞の腫瘍化とBリンパ球の機能異常の関連を明らかにするため高齢のCD22欠損マウスのB細胞表面マーカーの発現についてフローサイトメーターを用いて検討した。高齢のCD22欠損マウスでは野生型マウスおよび若年のCD22欠損マウスと比較して,末梢B細胞におけるIgMリセプターの発現量低下とCD44などの活性化マーカーの発現量増加が認められた。以上の結果から,CD22の欠損はB細胞を活性化させ加齢とともにその腫瘍化を引き起こす可能性が示唆された。
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