健康成人248例(男性141例、女性107例)を対象に、小胞体ストレス反応に関連し、最近、双極性障害の発症関連遺伝子として注目されているXBP1遺伝子と、人格特性の関連を二つの自己記入式人格検査Temperament and Character Inventory (TCI)とNEO Five Factor Inventory (NEO-FFI)を用いて検討した。XBP1遺伝子の-116C/G多型は、女性において、NEO-FFIのneuroticismと関連することが明らかとなった(p=0.003)。しかしながらNEO-FFIのその他の4項目やTCI7項目とは有意な関連は認められなかった。今後は、双極性障害患者においても同様の検討を行い、病前性格との関連を明らかにすることが必要である。 XBP1遺伝子の-116G alleleを有する双極性障害患者の培養リンパ球で小胞体ストレス反応が障害されており、その障害はmood stabilizerの中でもバルプロ酸でのみ改善されることが報告されている。そこで、本研究では、双極性障害患者66例(BP I障害20例、BP II障害46例)を対象に、XBP1遺伝子-116C/G多型とリチウム反応性の関連をまず検討してみた。リチウム治療は、0.4-1.2mEq/lの血中濃度が保たれ、少なくとも1年以上継続されている患者のみを対象とした。その結果、-116C alleleを有する患者群がそれを有しない患者群と比較して、有意にリチウム反応性が良好であった。この所見は、-116G alleleを有する患者群がバルプロ酸に反応性が良好であることとは矛盾しない結果であった。今後、さらに多数症例で、他のmood stabilizer反応性とXBP1遺伝子多型との関連を検討していく必要がある。
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