小胞体ストレス反応に関連し、双極性障害の発症関連遺伝子として注目されているXBP1遺伝子と、人格特性の関連について、健康成人248例を対象に二つの自己記入式人格検査Temperament and Character Inventory (TCI)とNEO Five Factor Inventory (NEO-FFI)を用いて検討した。XBP1遺伝子の-116C/G多型は、女性において、NEO-FFIのneuroticismと関連することが明らかとなった(p=0.003)。しかしながら、NEO-FFIのその他の4項目やTCI7項目とは有意な関連は認められなかった。 XBP1遺伝子の-116G alleleを有する双極性障害患者の培養リンパ球で小胞体ストレス反応が障害されており、その障害はmood stabilizerの中でもバルプロ酸でのみ改善されることが報告されている。そこで、双極性障害患者66例を対象に、XBP1遺伝子-116C/G多型とリチウム反応性の関連を検討した。-116C alleleを有する患者群がそれを有しない患者群と比較して、有意にリチウム反応性が良好であった。この所見は、-116G alleleを有する患者群がバルプロ酸に反応性が良好であることとは矛盾しない結果であった。 次に、Caホメオスタシスにおける小胞体Ca-ATPaseポンプ(SERCA)の役割を検討する目的で、健常成人血小板を用いて、SERCA抑制剤タブシガルギン(TG)によって誘発される一過性細胞内Ca濃度増加反応と、その後の細胞外Ca追加によって誘発される容量性Ca流入反応を測定し、PKC系あるいはCaM系調整剤の影響を検討した。双極性障害、大うつ病性障害、健常者の3群で、TGによる一過性Ca増加反応と容量性Ca流入反応には有意差は認められなかったが、PKC系刺激による容量性Ca流入反応の抑制効果は、大うつ病性障害や健常群に比較して、双極性障害群において有意に増加し、逆に、PKC系抑制による容量性Ca流入反応の促進効果は有意に低下していることが示唆された。このことは、双極性障害においてPKC系亢進が病態として存在し、容量性Ca流入反応の抑制効果を増強している可能性が考えられる。
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