不安惹起物質であるFG7142の急性投与によって、老齢マウス(18月齢)の海馬において、その遺伝子発現量が変化する遺伝子について、DNAマイクロアレイ法を用いて調べたところ、13種類の遺伝子が有意に増加しており、有意に減少した遺伝子は検出されなかった。この結果をもとに、それぞれの遺伝子に特異的なプラーマーを作成して、定量的RT-PCR法によって、その変化を確認したところ、11種類の遺伝子は、統計学的に有意にその発現量の増加していることがわかったが、2種類の遺伝子に関しては、その増加は確認できなかった。さらに、前述の11遺伝子に関して、8週齢マウスと8日齢マウスの海馬において、FG7142急性投与の影響を調べたところ、8週齢のマウスでは、すべての遺伝子が統計学的に増加していたが、8日齢では、いずれの遺伝子もその発現量の変化が認められなかった。 また、18月齢マウスを用いて、1時間の拘束ストレスを負荷して、海馬における遺伝子発現量の変化について、前述の11遺伝子に関して、定量的RT-PCR法を用いて調べたところ、3種類の遺伝子の発現量が増加していることがわかった。8週齢マウスにおいては、このうち2遺伝子は、同様に増加が認められ、8日齢では、この3遺伝子はいずれも、その発現量の変化はなかった。 従って、マウスの海馬では、不安惹起物質の急性投与やストレス負荷に対して、年齢依存的な反応性を示す遺伝子群が存在することが示唆された。
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