本研究では、人口10万の地域での乳幼児健康診査を利用して、自閉症・広汎性発達障害の発生頻度について検討することを目的とした。研究期間に確定診断が可能となる年齢群の健康診査のデータを検討したところ約2000名が母集団として候補となった。このそれぞれについて、1カ月、2カ月、4カ月、7カ月、12カ月、18カ月、24カ月、36カ月の各検診時のデータが存在していた。このうち入力が時間的に可能であったある地区の約400名について、周産期障害、発達経過などを、広汎性発達障害群とそれ以外の群で比較検討した。 現時点では400名全体についての検討は不十分であるが、40週未満での出産が多い傾向にあり、出生時体重も3000gに満たない傾向があった。何らかの発達上の問題があって、療育の機会を設けられた児童は34名で7.5%であり、このうち自閉症・広汎性発達障害の児童は6名(1.5%)であり、非定型広汎性発達障害の児童を含めるとその数は10名に達した。他は、情緒的問題、注意欠陥多動性障害のハイリスク群と予想される行動症状、ダウン症などであり、広汎性発達障害関連の状態は近年他の都市で報告されている頻度と同様に1%を超えていた。 残念ながら、広汎性発達障害群の数が乏しいため、当初予定していた広汎性発達障害群内での比較検討は困難であった。しかし、標本全体との比較は十分とはいえないものの、今後の健診で早期発見の方法を確立する意義が見出せたものと考えている。
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