本研究は、(1)「質問紙」の作成、(2)PTSDの生理学的指標としてのHRVの標準化、(3)被害者陳述の信用性・信憑性を評価する総合的方法論の構築の3つからなる。 平成17年度は、このうちの(1)と(2)のそれぞれ一部を行った。 (1)については、被験者が意図的に自己の病態を過剰に重症に見せかけたり、詐病としてPTSDであることを装ったりすることができない質問紙尺度を開発することを試みた。 心的外傷に非特異的な心身の健康状態についての質問項目のみから構成された「PTSD診断尺度」を構成すべく、ミネソタ多面人格目録(MMPI)中からPTSD患者に対する判別力の高い項目を選び出し、被験者が意図的に自己の病態を過剰に重症に見せかけることができない質問紙尺度を開発することをめざし、PTSD患者、精神科クリニックを初診した非PTSD患者、一般大学生の3群比較を続けている。 これまでに得られたデータからは、1)MMP Iのサブスケールとして米国で開発された「PK-II」がわが国においても有効性が高いこと、2)MMP Iの他の臨床尺度と同様にK点補正をすることが好ましいこと、3)F点補正とでもよぶべき操作がさらに判別性を向上させること、などが示唆されている。 (2)については、HRV測定機器(ProcompInf【○!R】))を本研究用に調整・較正しているところである。特に、女性被検者の協力を容易にするために、着衣のまま装着可能なECG電極を工夫しているところである。
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