研究概要 |
1.ラット脳室内に投与したCRFが、青斑核に存在するノルアドレナリン(NA)含有神経系、視床下部室傍核に存在するCRF含有神経系および介在アセチルコリン(ACh)含有神経系からなるニューロサーキットを活性化するか否かを最初期遺伝子産物c-FOSの発現を指標に、免疫組織化学的に解析した。CRF(1.5nmol/animal)は、青斑核、室傍核および橋背外側被蓋核において強いc-FOS発現を引き起した。 2.これら3つの脳部位について、抗c-FOS抗体および個々の神経系に特異的な抗体を用いてさらに蛍光二重免疫染色を行い、このサーキットに関与する神経細胞を同定した。青斑核のc-FOS陽性細胞は、ドパミンβハイドロキシレース陽性細胞であり、CRFによって青斑核のNA含有神経系が活性化されることが明らかとなった。さらに、この細胞はニコチン受容体α3サブユニット陽性であることも明らかとなった。室傍核のc-FOS陽性細胞は、CRF陽性であり、室傍核のCRF含有神経系の活性化が明らかとなった。さらにこの細胞は、アドレナリン受容体α1bサブユニット陽性でもあることから、青斑核のNA含有神経細胞体の活性化が経シナプス的に室傍核のCRF含有神経系へ伝達される可能性が推測された。橋背外側被蓋核のc-FOS陽性細胞は、コリンアセチルトランスフェラーゼ陽性であったことから、橋背外側被蓋核のACh含有神経系の活性化が明らかとなった。なお抗CRF-1受容体抗体による二重染色も試みたが、使用した抗体間で結果にばらつきがあり明確にはできなかった。 3.CRFによる3つの脳部位のc-FOS発現は、CP154,526(CRF-1受容体遮断薬)、フェントラミン(α受容体遮断薬)およびヘキサメトニウム(ニコチン受容体遮断薬)の脳室内前処置により有意に減少したことから、このニューロサーキットの機能的連関が推測された。
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