研究概要 |
本年度は協力の同意の得られた被験者のうち新たに23名について,1,精神科医師による面接,2,自己回答式質問表であるBeck Depression Inventory-Second Edition(BDI-II)日本語版,3,採血,4,頭部MRI検査を実施した。精神科医師による面接では,年齢,性別,教育歴,飲酒歴,喫煙歴,既往歴(高血圧症,糖尿病,心筋梗塞,脳卒中,頭部外傷)の聴取と,知的精神機能検査Mini-mental state examination(MMSE),認知症評価尺度Clinical dementia rating(CDR)の施行,および認知症疾患と気分障害の診断を行った。 血清検体はELISA法により以下の6つサイトカインおよび可溶性サイトカイン受容体の血清中濃度測定を行った。インターロイキン1β(IL-1β),IL-2,IL-6,腫瘍壊死因子α(TNFα),可溶性IL2受容体(soluble IL-2 receptor ; sIL-2R),sIL-6R。 前年度分と合わせた被験者99名(男性24名,女性75名,平均年齢75.6±6.6歳)となった。認知症疾患2名,MCI9名を除外した後,年齢,血清中IL-1β,IL-2,IL-6,TNFα,sIL-2R,sIL-6R濃度を独立変数(説明変数),BDI-IIスコアを従属変数(目的変数)としてSpearman rank correlationによる相関を検討したところ,血中IL-1β値とBDI-IIスコアの間にのみ統計学的に有意な正の相関を認めた(p=0.027,ρ=0.222)。この結果は,前臨床状態にあるうつ状態にも,すでにサイトカインが関与していることを示していると考えられる。
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