研究概要 |
ICD-10によってうつ病(F31.双極性感情障害、F32.うつ病エピソード、F33.反復性うつ病性障害)と診断された長崎大学医学部・歯学部附属病院精神神経科を受診した50歳以上の患者のうちSackeim(1990)の薬物治療強度評価基準により薬物抵抗性または薬物治療不耐性と判断する外来・入院症例を対象とする。心疾疾患の既往またその他の重症な身体疾患がなく、頭部MRIを施行し、T2,T1画像にて確認される微小梗塞が存在するうつ病症例において書面にて同意を得た症例に対して脳梗塞の臨床適応が認められているcAMP増強薬(シロスタゾール)を使用した。血中BDNF測定の基礎検討(性差、時間、年齢、季節、食事)を行い15-35pg/mlの範囲で測定可能であり、環境による影響は比較的少ない結果であった。シロスタゾールを脳梗塞後うつ病患者5名に関して50・200mg投与し、0,4,8,12週時のHAMD、血清BDNFを測定した。BDNFをPromgea BDNF Emax^<TM> Immuno Assay Systemを用いELISA法により測定した。HAMDは経時的に減少を示し、血中BDNFは経時的に増加を示した。 基礎的検討としての神経幹細胞に対するシロスタゾール影響を検討した。胎齢15.5日マウス胎仔脳から線条体原基を分離・分散後、成長因子[EGF(20ng/ml)]を加えたMHM(Media Hormone Mix)培養液中にニューロスフェアー法により神経幹細胞を増殖しWST-8 assayを行い、シロスタゾールの増殖能に与える影響について評価を行った。WST-8は細胞内脱水素酵素により還元され、水溶性のホルマザンを生成する。このホルマザンの450nmの吸光度を直接測定することにより、生細胞数を計測した。シロスタゾール1,3,7日と経時的かつ濃度依存的に有意に増殖能を低下させた。このことよりcAMP系が神経幹細胞の増殖分化に影響を及ぼしていることが明らかになった。
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