研究課題/領域番号 |
17591227
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中川 康司 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (20335970)
|
研究分担者 |
岸本 年史 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60201456)
中村 祐 香川大学, 医学部, 教授 (70291440)
|
キーワード | 認知症高齢者 / 介護家族 / 介護負担感 / ナラティブアプローチ |
研究概要 |
研究代表者らはナラティヴアプローチ(物語的接近法)による痴呆性高齢者介護家族の介護負担感の軽減に関する研究に着手し、当院精神科外来患者および十津川村在住高齢者の中から対象者の選定が行われた。また、認知症の診断に際しては画像検査が極めて重要な意義を占めることからMRIに関する最新の著作物から知見を得た。「物語的な接近」を有効に行うためには、物語、昔話、民話、おとぎ話、小説の有する仕組みや構造、並びに方法論に対する理解が不可欠である。そこで、日本を代表する作家や評論家の論文並びに作品を評価することによって認知症を取り巻く物語的状況や日本人独特の心性や価値観の分析が行われた。また、「物語的な接近」を行うにあたっては、物語を形作る要素のひとつである「日本語」や「言葉」に対する理解を避けて通れないことから、言語学、修辞法(隠喩等)、表現について著わされた論文並びに著作物を評価することによって、認知症患者や介護家族との間で交わされる会話に潜む介護負担感の分析が行われた。更に、研究代表者らは認知症患者や介護家族は現在社会から切り離された存在では決してない点を重視し、精神保健、学校、事件(刑事鑑定等)の各分野を鏡として映し出される「今という時代」や「現代人の切実な問い」「語り手(対象者)の価値観」に対する理解に努めた。その上で、臨床人類学、ポストモダン文化(ポスト構造主義)、社会行動学(社会心理学)的視点による異化作用を利用することで、認知症患者や看護家族の日常生活(空間)を再構成する試みを行った。対象者と研究代表者らとの会話ややりとりは、対象者の同意のもとで、既に準備されているビデオカメラやICレコーダーを用いてデジタルファイルとして記録され、HDディスクやDVDディスク、フラッシュメモリー等の記録メディアに保存された。以上の作業に並行して、本研究とも関連を有する認知症の危険因子に関する情報の整理収集にも努めた。今後は記録された会話内容に検討を加え、LANシステム経由でMEDLINEより収集された内外の文献資料を参考にしつつ、得られた成果を論文として発表する予定である。
|