研究概要 |
本年度は最終年度であるため,神経障害仮説に基づく統合失調症のラットモデルとして,胎生期神経発達障害ラットの作成を試みた。胎生期での神経発達を障害するmethylazoxymethanol(MAM)を妊娠ラット(妊娠中期)に投与した.このラットの幼若期(生後7日)および成熟期(PD36)に,乱用薬であるmethamphetamineを慢性に負荷し(6mglkgを1日1回,5日連続皮下投与),24時間後の辺縁系および大脳皮質における神経細胞死およびアポトーシス関連タンパク質であるBc1-2,Baxなどを,それぞれTUNEL法,insituhybridization,免疫組織化学的手法を用い検討した。その結果,TUNELによる神経細胞死やBcl-2,Baxの発現は対照群と異なることがなく,また黒質や腹側被蓋野でのドーパミントランスポーター(DAT)mRNAの発現にも,methamphetamineによる発現の違いは認められなかった。このことから,MAMは確かに海馬や大脳皮質の細胞構築の形成を障害するが,methamphetamineの誘発する神経細胞死やDAT機能の低下に対しては,影響を与えないことがわかった。従って,胎生期MAM投与によりmethamphetamineへの感受性には変化がないことが示され,ドーパミン仮説に基づいた統合失調症の動物モデルとしては不適切であることが示唆された。
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