研究課題
SNAP-25はシナプス前神経末端からの神経伝達物質の放出に、不可欠の蛋白質である。高橋ら(北里大学代謝・蛋白学)により神経伝達物質放出の際にSNAP-25のSer187がプロテインキナーゼC(PKC)の活性化によって特異的にリン酸化されること、PKCによるリン酸化依存的に細胞膜への分泌小胞の移行が促進されることなどが明らかにされた。また、高橋らはSNAP-25のリン酸化部位であるSer187をAlaに置換したノックインマウスを作成した。この若齢のノックインマウスは各種神経伝達物質の放出が正常に行われないことにより、様々な行動様式の異常を認めることが示された。われわれは、生後52週以上の老齢のノックインマウスを用いてその生体の特徴および行動につき調べた。野生型の体重は週齢とともに増加していったが、ホモマウスは生後約15週後頃より体重増加が停止した。60〜73週のホモマウスの雄、雌の平均体重はそれぞれのワイルドマウスと比較し、60%と67%にすぎなかった。また、ホモマウスの脳の平均湿重量は野生型に比べ、25%程度増量していた。オープンフィールド実験では、ホモマウスはフィールドの中央を回避して壁伝いに移動する接触走性の傾向が認められた。実験の過程にてホモマウスは後脚で眼瞼を掻杷する自傷行為が認められた。今回の実験にて、老齢のSNAP-25変異マウスの野生型、ヘテロマウスとホモマウスの行動の相違が明らかとなった。今後はこのマウスの脳内各種伝達物質の放出の障害と行動の変化につき、マイクロダイアライシス法などを用いて調べていく。
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Psychiatry and Clinical Neuroscience 59
ページ: 358-361
今月の治療 13(8)
ページ: 87-92
Psychiatry and Clinical Neurosciences (in press)