研究概要 |
SNAP-25はシナプス前神経末端からの神経伝達物質の放出に関与している蛋白質である。プロテインキナーゼC(PKC)によるリン酸化はシナプス小胞のリクルートを促進するが、それにはSNAP-25の特異的リン酸部位(Ser187)が関与している。われわれはSNAP-25のSer187をAlaに置換したノックインマウス(SNAP-25変異マウス)を作成し、行動薬理学的な分析などを行い、ホモマウスがオープンフィールド内で多動と無動を繰り返したり、明暗実験では暗部に閉じこもることなどを発表してきた。 今回の研究目的は、SNAP-25変異マウスにおける脳内神経伝達物質の含有量を調べることである。8〜12週の野生型、ヘテロ型、ホモの各マウス(全てn=8)を用いた。動物の取り扱いに関しては北里大学動物実験指針を遵守した。前頭皮質、線状体、海馬、扁桃体、視床、視床下部、脳幹、小脳のノルエピネフリン、ドパミン、セロトニン、MHPG,DOPAC,HVA,5-HIAA、グルタミン酸、GABA、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、グリシン、スレオニン、アラニンの濃度を高速液体クロマトグラフィー・電気化学検出器にて測定した。結果として、海馬と扁桃体においてホモマウスのノルエピネフリン量が減少していた。次にマイクロダイアライシスを用いて扁桃体におけるドパミンとセロトニンの放出に異常がないかどうかについて高カリウム刺激を用いて調査した。短時間の刺激ではホモと野性型に有意差はなかったが、長時間の刺激ではホモは有意に放出量が減っていることが示唆された。また、拘束ストレスによる視床下部におけるドパミンとセロトニンの放出量を調べたところ、ドパミンではホモの放出量が野性型に比べて有意に減少していた。
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