研究課題
これまで我々は、抗うつ薬の奏効機転に関与するラット脳内遺伝子を網羅的に探索してきた(antidepressant related gene : ADRG#1-707)。その中でADRG#34は、抗うつ薬、電気けいれん負荷、経頭蓋的磁気刺激負荷等の全く異なるうつ病治療法において共通して発現増加すること、ユビキチンリガーゼとしての機能を有することが明らかとなった。本年度は、ADRG#34の細胞内局在を検討するためにV5-His_6標識ADRG#34を構築し、HEK293細胞に発現させ免疫染色にて観察した。その結果、小胞体マーカーであるBipと共に小胞体に局在していた。一方、ゴルジ体マーカーであるgiantinとの共局在は認められなかった。プレフェルジンA(BFA)によってゴルジ体を小胞体へ逆行輸送させると、giantinとの共局在が認められた。このことからADRG#34は細胞内小胞体に局在することが明らかとなった。次にラット脳内での発現を免疫染色にて検討した。海馬及び大脳皮質において、ADRG#34は神経細胞マーカーであるNeuN陽性細胞と共局在が認められたが、グリア細胞マーカーであるGFAP陽性細胞には発現は認められなかった。さらにADRG#34は小胞体マーカーであるBipと共に小胞体に局在していた。これらのことからADRG#34は神経細胞に発現する小胞体膜貫通型のユビキチンリガーゼであることが明らかとなった。小胞体膜貫通型のユビキチンリガーゼは、小胞体内にある不要なタンパクの識別、輸送、分解に関与することが明らかとなっている(小胞体関連分解)。抗うつ薬によるうつ病の治癒機転に、ADRG#34の発現上昇を介した小胞体関連分解が関与しているものと推測される。
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