研究概要 |
心筋リモデリングにおけるのアポトーシスの関与に関して,ラット心筋虚血再灌流モデルにおいて基礎的検討を行った。虚血時間は20分とし,再灌流14日後の時点での組織学的変化とアポトーシスによって細胞膜表面へ露出したphosphatidylserine(PS)に結合するTc-99m-Annexin V(Tc-AV)の集積を検討した。心筋に菲薄化を生じなかった群の虚血部のTc-AVの集積は視覚的にはっきりせず,正常部に対する虚血部のTc-AVの集積は定量的にも1.01±0.29と有意の増加を示さなかった。虚血部に対するTc-AVの集積部の領域(面積)の割合は0.48±0.20であった。心筋に菲薄化を生じ内腔が拡大し,リモデリングを生じたと考えられる群では菲薄化した部分に一致したTc-AVの集積を視覚的に認め,正常部に対する集積比は,1.71±0.34と有意に増加していた。心筋壁厚が正常部の1/2程度となった群ではTc-AVの集積は心内膜側から中部において高く,心外膜側の集積は低かった。一方,虚血部の心筋壁厚が1/3以下となり菲薄化した部位では,菲薄化部全体に不均一な集積を示していた。リモデリングに関与している可能性が示唆されている,細胞外マトリックス糖タンパク質であるtenascin Cの発現に関しても検討した。tenascin Cに対する抗体をI-125で標識しその分布を検討した。tenascin Cは正常心では発現しておらず,20分虚血後再還流1日では正常部に対する虚血部の集積比が1.81±0.53であり,3日後では2.46±0.91,7日後では集積が著名に低下し,1.23±0.17であった。集積は病理学的に梗塞部に接する周辺部にみられた。以上より,心筋リモデリングにはアポトーシスが関与していることが示唆されたが,tenascin Cの発現との関連は今後の課題となった。
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