昨年度に引き続き、ラット肝の生体顕微鏡観察手技を応用して大型動物用生体顕微鏡下でウサギ正常肝血流の観察・記録を行った。具体的にはウサギ(日本白色種)を使用、腹部正中切開下に肝葉を露出し、生体顕微鏡観察ステージ上に固定、耳静脈より注入した蛍光物質の肝類洞内流入・流出動態の観察および、アナログビデオ記録装置を用いた記録を行った。 当初予定していたリピオドールの総肝動脈注入は、技術的には可能であるが薬剤が複数あるウサギの肝葉全体に不均等に分布するためヒトのように単一の肝葉や肝区域へ選択的カテーテリゼーションを行って観察する場合と比較すると生体顕微鏡下に観察可能な特定の肝葉辺縁部へのリピオドール流入量が一定ではなく、血行動態変化に再現性に乏しいと考えられた。このような手技的なバイアスに起因するデータ不均一性を排除するため、まず、全肝に比較的均等に分布すると考えられる水溶性液体性薬剤を使用した肝内血行動態変化の観察を行うこととした。具体的には初期検討としてウサギ開腹下で正常肝類洞血流速度の測定を行った。 さらに、血管収縮、拡張に関与する薬剤を肝動脈系、門脈系からそれぞれ投与する経路確保手技の確立に努めた。経門脈性薬剤投与経路として上腸間膜静脈分枝へのカニュレーション、経肝動脈性薬剤投与経路として胃十二指腸動脈からの逆行性投与を検討中であるが後者に関しては手技確立中である。 これら手技確立と並行して最終目標である担癌動物における肝血行動態観察の準備段階としてウサギ肝腫瘍モデルの作成に必要な細胞培養設備の充実、手技確立に努めた。
|