研究概要 |
マウス腫瘍内Cu-ATSM集積部位の性質について、昨年度に引き続きB16,Colon26,LLC1,MethA,の4種類のマウス腫瘍細胞の皮下移植モデルで検討した。腫瘍内のCu-ATSM高集積部位は血管が乏しく、Ki67を発現する増殖期の細胞もほとんど見られないというこれまでの結果に加え、細胞死の形態においても、necrosisではなくapoptosisがみられ、低酸素のマーカーであるpimonidazolが集積しないことがわかった。一方FDGの高集積部位にはnecrosisが見られ,pimonidazolの集積も認められた。この結果FDGの高集積部位は、血管周辺の増殖する細胞、血管から100-200μm離れた低酸素に陥っている細胞,necrossiを起こしている細胞が混在する領域であることがわかった。血管の存在や増殖が盛んなことから、FDGの高集積部位は薬剤、放射線などによる治療が有効であると考えられる。これに対しCu-ATSMの高集積部位は治療に抵抗性が高いと予測される。さらにCu-ATSMの集積の程度とその部位の細胞の増殖能についてcolony formation assayを用いて検討したところ、Cu-ATSMの高集積部位は他の部位に比べて同等以上の贈殖能を有することが明らかとなり、Cu-ATSMの高集積部位は現在休止期にあっても将来増殖する可能性をもち、治療対象としての重要性が示された。 各種の腫瘍細胞におけるCPRとb5RのmRNA発現量と低酸素耐性が相関があすると報告されている。これらの酵素はCu-ATSMの細胞取り込みに関与している。これらの酵素を過剰発現する細胞株を作製、また、siRNAにより発現を抑制して、低酸素耐性への影響を検討したが,有意な変化は見られなかった。低酸素耐性にはこれらの酵素の発現量以外の要因が複合的に関与していることが予想された。
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