研究概要 |
本年度は、放射性薬剤(FLT)の合成装置の故障が長引いたために、年間で12症例(うち原発性脳腫瘍症例は2症例)の検査にとどまった。研究内容を文書にて説明し、同意を得た患者にFLT約370MBqを静脈内投与、40分後より頭部の撮像(エミッションスキャン20分、トランスミッションスキャン3分)を行った。病巣部に関心領域を設定し、FLTの腫瘍集積の半定量値(SUV)を測定し、病理診断や各種画像・臨床像と比較検討した。 前年度までの症例も含め、原発性脳腫瘍の悪性度診断におけるFLT-PETの有用性に関する評価結果をまとめ、(1)FLTの腫瘍集積性が原発性脳腫瘍の悪性度を反映すること、(2)FLTの腫瘍集積性が組織学的に決定された細胞増殖のマーカーであるKi-67発現の程度に相関すること、(3)しかしながら血液脳関門の破綻を伴う良性疾患でも疑陽性を呈しうること、を論文に発表した(SagaT, et al., Clin Nucl Med, 2006;31:774-80)。 FLTの腫瘍集積性に基づいて、悪性脳腫瘍患者の予後を予測可能かどうか検討するために、FLT-PETが施行された患者の予後調査を行った。手術・放射線化学療法が施行された患者のうち、再発の有無を追跡可能であった14例中、12例で治療後1〜22ヶ月で再発が認められたが、FLTの集積性(SUV)と再発までの期間に有意な相関を認めなかった。元々、悪性脳腫瘍が予後不良であること、症例数が少なかったこともあり、さらに症例を増やしての検討が必要と思われる。 FLTの腫瘍内分布を放射線治療計画や生検部位の設定に応用する目的で、患者頭部にマーカーをつけてPETおよびCT撮像を行って、マーカーを指標にしてPET画像とCT画像の融合を行うと共に、FLT-およびFDG-PET画像と同一患者のMRI画像を、ソフトウェアを用いて融合画像の作成を試みた。
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