研究課題
基盤研究(C)
今年度の研究では、中性子捕捉療法の原理を細胞レベルに応用し、CHO細胞のHPRT遺伝子における突然変異の解析システムが放射線誘発バイスタンダー効果を評価できるかどうか検討した。BNCTで使用されている硼素化合物を取り込んだ細胞と取り込みのない細胞を混ぜ合わせて中性子を照射することで、α線のバイスタンダー効果による突然変異誘発効果を求め、さらに、バイスタンダー効果により誘発された突然変異細胞のDNA解析を行った。方法:照射前に、BSHをエレクトロポレーションを用いて細胞内に確実に取り込ませた細胞と、ホウ素の取り込みの全くない細胞を混合した。京都大学原子炉の重水設備で中性子を照射後、細胞の一部は生存率を求めるために培地に蒔いた。残りの細胞を照射7日後に選択培地に蒔いてコロニーを数え、HPRT突然変異発生頻度と死亡率の関係を求めた。突然変異のコロニーを選別し、生理食塩法で突然変異クローン細胞のDNAを抽出し、9つのExonについてPCR法を用いて解析した。結果と考察:突然変異誘発頻度については、細胞内にホウ素を取り込ませた細胞と、ホウ素の取り込みのない細胞の割合が1:1の時に、突然変異の発生頻度がコントロールの約4倍に増加した。この結果より、α線の照射を受けていない細胞が照射を受けた細胞から影響を受け突然変異が誘発されたと推測される。又DNA解析より、このバイスタンダー効果により誘発された突然変異細胞は、中性子照射で誘発された突然変異細胞と比べると、点突然変異の割合が多く、欠失型の突然変異の割合が少なかった。この結果より、バイスタンダー効果による突然変異誘発には中性子の直接作用とは異なった障害の寄与が示唆される。以上の研究成果より、このCHO細胞の突然変異の解析システムは中性子捕捉療法における放射線誘発バイスタンダー効果を評価することができると確認された。
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Radiation Medicine 24・2
ページ: 98-107
Anticancer Research 26・2A
ページ: 1261-1270
International Journal of Hyperthermia (in press)(未定)