研究課題
今年度の研究により、中性子捕捉療法(BNCT)で使用されているホウ素化合物BSHをエレクトロポレーションを用いて細胞内に確実に取り込ませた細胞と、ホウ素の取り込みの全くない細胞を混合し、中性子照射後、HPRT突然変異発生機構に対する影響を調べた。この実験系で、α線の照射を受けていない細胞がα線の照射を受けた細胞に影響を受け突然変異の誘発頻度が増加したことから、BNCTにおけるバイスタンダー効果が確認された。さらに、バイスタンダー効果により誘発された突然変異細胞のDNA解析の結果、その変異形態の特徴は点突然変異優位の変異形態であった。また、このバイスタンダー効果により誘発された突然変異はアスコルビン酸を添加することで有意に誘発が抑制された。これらの細胞実験のデータより、BNCTにおけるバイスタンダー効果による生体への突然変異誘発増強効果はラジカルスカベンジャーにより防護される可能性がある。そこで、バイスタンダー効果に対する防護方法を開発するために、BNCTにおいて、ビタミンC配糖体を負荷したときのマウスの脾細胞のHPRT遺伝子の突然変異誘発への影響を調べた。血中のアスコルビン酸濃度が高い状態では、マウス脾細胞のHPRT遺伝子の突然変異誘発は抑制されたが、細胞実験データに比して、その抑制作用は軽微であった。ビタミンC配糖体を負荷した時の放射線照射後の抗酸化酵素活性の変化を測定したところ、脾細胞において抗酸化酵素活性が有意に増加した。このことより、生体におけるアスコルビン酸の放射線防護のメカニズムの一部が検証できたと考えている。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
Journal of Radiation Research (in press)(未定)
International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics (in press)(未定)
British Journal of Radiology 79・948
ページ: 991-998
International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics 66・5
ページ: 1515-1522
ページ: 1523-1527
ページ: 1584-1589