研究課題
平成18年度は、考案した実験方法に基づき、具体的に計画する動物実験を、岡山大学自然生命科学研究支援センター動物資源部門にて以下のごとく施行した。2年の研究期間の2年目に当たる本年度の実験の主たる研究目的は、一時的血流遮断が焼灼域拡大効果を示すか否かを検証するものである。凝固壊死範囲拡大のために血流を一時的に遮断することにより、cooling effectを阻害し、結果として焼灼域の拡大を図ることが可能であるかを実験的に確認した。一時的血流遮断の方法として一時的塞栓物質であるDegradable starch microspheres(以下DSM)を肺動脈内に注入した。手順は以下のごとくである。動物としては、ブタ5匹を使用した。肺動脈塞栓は大腿静脈から肺動脈内にカテーテルを進め、肺葉単位で選択的に塞栓した。なお肺動脈塞栓前後のSaO_2を測定した。胸骨正中切開にて開胸下で肺に電極針を直視下に穿刺して行った。焼灼にはLeVeen電極針(BostonScientific)とジェネレーターは昨年度科学研究費で購入したRF3000(BostonScienticic)を用いた。電極針は8本の展開針を持ち、展開径は2cmのものを使用した。焼灼は以下の4群で行った。(1)肺動脈塞栓を行わずに焼灼する群、(2)肺動脈塞栓直後に焼灼した群、(3)肺動脈塞栓15分後に焼灼した群、(4)肺動脈塞栓30分後に焼灼した群。焼灼終了後、両肺を摘出し、焼灼部を電極針に沿って切開した。焼灼部の最大断面での最大径、最小径を測定した。さらに焼灼域を3mm間隔でスライスし、各断面での焼灼面積を測定して、総焼灼容積を算出した。固定された標本は、岡山大学医学部放射線医学教室内でヘマトキシリン・エオジン染色し、顕微鏡学的に焼灼範囲の組織学的変化、焼灼範囲内の血管の凝固壊死、塞栓部肺の損傷の程度などを評価した。実験から得られた結果は以下のごとくである。肺動脈塞栓前後SaO_2の有意な低下はなく、塞栓領域肺には組織学的に損傷は認めなかった。凝固壊死容積は(1)群0.9±0.5cm^3、(2)群2.1±0.4cm^3、(3)群2.1±1.0cm^3、(1)群1.9±0.6cm^3となった。肺動脈塞栓を行った(2)〜(4)群は塞栓を行わなかった(1)群に比して有意に焼灼容積が大きかった(P<0.05)。以上より肺動脈塞栓は凝固壊死容積を有意に拡大することが実験的に証明された。これらの結果は、郷原英夫と向井敬が、国内外の学会において発表し、海外のpeer review雑誌に投稿中である。
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