研究概要 |
(目的)臨床用3Tesla装置によるニューロトランスミッターに関連する代謝物として興奮性シナプスのグルタミン酸に加えて抑制性シナプスのγ-amino酪酸を中心に検出法を検討した。昨年開発したMEGA-PRESSによるJ-difference subtraction法を用いて、測定部位内の組織の特異性や容積効果を補正した指標を考案して検討に加えた。差分前のスペクトルからNAA及びCrの値を基準としてニューロン内や脳組織内のGABA濃度を反映するGABAnergic indexを作成して評価を試みた。(対象と方法)対象は正常ボランティア5名と脳回異常を有する小児5名である。使用した装置は臨床用3テスラMRI装置(Signa 3T Excite)であり、信号の送受信には頭部用標準コイルを用いた。MEGA-PRESS法を用いて1.9ppmの周波数選択パルスを印加したスペクトルと印加しないスペクトルとを差分することにより3.01ppmのGABAの信号を評価した。測定条件はTR=1500ms, TE=67ms,積算=256回,FOV=27mlである。周波数選択パルスを印加しないスペクトルのNAA信号をneuronal densityとして、Cr信号をbrain tissue densityとしてGABAの信号を較正した。(結果及び考察)正常者の脳内部位の相違によるGABA濃度の違いは、基底核部で最も高く、前頭葉白質、帯状回の順で低かった。Crを指標として脳脊髄液等の脳組織以外の構成を較正した指標でも、同様の傾向であったが、NAAを指標とした場合、前頭葉と帯状回とでは有意差が認められなかった。これは前頭葉と帯状回とでニューロンと非ニューロン内のGABA濃度の分布に相違があることを示唆すると考えられた。GABAの外部摂取では、血圧低下等の生理的変化が認められ、脳内では前頭葉のGABA濃度及びGABAnergic indexの増加が認められた。脳回異常ではneuronal GABAnergic indexの上昇が著明であった。(結語)GABA濃度測定に加えて、他の代謝物の指標を用いることにより部分容積効果の回避と組織成分におけるGABA分布の相違を評価可能と考えられた。
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