研究課題
基盤研究(C)
近年、生体に対する電磁波放射は、生体機構への損傷の問題として注目されている。また通信周波数の向上により、GHz帯域が使用されるようになり、この帯域の生体に対する影響が注目されている。本研究では、未だ未開発のミリ波・サブミリ波の生体内照射を視野において、その基礎的研究としてミリ波・サブミリ波の反射量の測定を行うものである。従来の我々の研究は、ジャイロトロンで生物試料を熱変性させるところから始まり、ミリ波帯域において、300mWクラスの発振器によっても生物試料を熱変性させうることを調べた。これを実際の医療に応用するために、生物試料が反射するミリ波・サブミリ波を測定し、その詳細を検討することにした。対象となる試料は、温度変化や構造変化によりその誘電率が変化するため、ミリ波・サブミリ波の反射量が変化するが、これを検波器で測定した。さらに、照射と同時に反射の測定を可能とし、照射中の反射状況を観測することにより試料への電磁波の吸収の様子を観測した。又、アテネータを用いて出力をコントロールし、熱変性に至る時間と出力との相関関係を得た。電磁波の照射において、薄膜誘電体によるAR(減反射)効果を観測し、試料への電磁波の吸収効率を高めるために有効であることを確認した。これによって、照射時に目的部位以外の照射を抑えることが可能となった。また伝送するにあたって、フレキシブルな導波管の開発を試みた。現在試作段階であるが、誘電正接の低いテフロンを用いて導波管を試作し、高い伝送効率を得、さらに屈曲に対する影響が少ないことを調べた。これらの成果を元に、福井大学の協力を得てジャイロトロンを用いた高出力電磁波による照射装置を開発した。これによって様々なアプリケーションを利用しても生体の変性に十分な照射出力を得ることができ、ここでもAR効果による照射効率向上と、フレキシブル導波管の有用性を確かめた。
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