研究課題
基盤研究(C)
悪性腫瘍の画像診断の手段としてPET検査が開発され、本邦においても急速に普及しつつある。現在用いられているPET用放射性薬剤として、フッ素18標識フルオロデオキシグルコース(FDG)の有用性は広く認められているが、肉芽腫などの炎症巣にも集積すること、脳組織に高い生理的集積を認めること、患者の糖代謝に集積程度が左右されるため糖尿病患者には使用しづらいこと等、診断、適応に際して種々の制限がある。本研究は、フッ素18標識フルオロエチルチロシン(FET)を用いて非侵襲的に生体内のアミノ酸代謝を測定し、FDGに次ぐ新たな薬剤による悪性腫瘍の診断法を開発することを目的としたものである。我々は、マウスの腫瘍および炎症モデルを作成して病変への集積程度を検討した。マウスにFETを投与し、正常臓器、腫瘍、炎症巣への分布を経時的に測定した。FETの正常臓器への集積は、投与30分以内に最高値を示し以後漸減した。また、腫瘍へのFET集積は炎症および正常臓器に比べて有意に高く、対筋肉比で2.50±0.44(60分後)、2.77±0.26(90分後)であった。次に、健常成人男性4名にFETを静脈投与し、投与直後からのdynamic撮像および投与60分後の全身static画像の撮像を行った。FETの正常臓器への集積は、いずれも投与5分以内に最高値を示し、投与後20分ほどでプラトーに達し、その後少なくとも60分までは大きな変化が見られなかった。投与60分後のstatic画像では、主要臓器への集積はいずれも筋肉とほぼ同程度かやや高い程度であったが、腎臓への集積がやや高い傾向にあった。FDGでしばしば問題となる腸管や脳への集積はFETでは低かった。以上より、FETは炎症性病変や腸管や脳への生理的集積が低く、悪性腫瘍診断に有効であることが示唆された。
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ACTA RADIOLOGICA 47
ページ: 1042-1048
ACTA RADIOLOGICA 47-10