癌の温熱療法において、よく治る癌と治らない癌が存在する。この違いは、癌細胞自身の温熱感受性の違いと温熱耐性の獲得にあると考えられているが、温熱感受性決定因子は未だ明らかでない。癌の温熱療法における問題点は、細胞の温熱耐性獲得にあると考える。我々は、in vitroの温熱実験系で放射線に高感受性を示すDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)遺伝子が欠損しているscid細胞が野生株と比較し高感受性であることを報告し、遺伝的因子が温熱感受性に影響している可能性を示した。今回、cDNAマイクロアレイによるゲノム解析により温熱処理した細胞に誘導される遺伝子の機能分類を実施し、温熱感受性と遺伝子発現との関連を求める。また、温熱耐性を抑制すると報告されている薬剤(Vitamin K_2)に対する誘導遺伝子や温熱耐性タンパクと関連する遺伝子産物を求め、温熱耐性獲得のメカニズムを検討する。 本年度(〜平成19年3月31日)の研究実績 cDNAマイクロアレイ法によって求めた誘導遺伝子の解析結果を基に、関連する遺伝子産物の推定を行った。また、温熱耐性抑制薬剤とアポトーシス誘導動態の解析を行った。さらに、温熱による細胞致死、温熱耐性とDNA損傷との関係をリン酸化ピストンγ-H2AXを用いて解析をおこなった。これまでに得られた結果を基に温熱耐性獲得のメカニズムを検討した。
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