研究概要 |
前年度の研究でNMT-1、NMTー1RいずれにおいてもX線と比較して炭素線照射により細胞致死効果は増強し、p53 statesに左右されず照射効果は同等であった。シスプラチン(DNA架橋形成)と重粒子線照射の同時併用ではいずれの細胞においても相加効果のみであり、増感効果は認められなかった。一方エトポシド(topoisomerase II阻害剤)と重粒子線照射の併用ではNMT-1では相加効果のみであったが、抵抗性腫瘍のNMT-1RにおいてDOの減少が見られ、明らかな増感効果を示した。よって今年度は重粒子線照射効果における抗癌剤の増感効果の検討ならびに細胞死の解明を行った。 方法:ラット卵黄嚢由来で同一細胞由来の放射線高感受性腫瘍(NMT-1:野生型p53)と放射線抵抗性腫瘍(NMT-1R:変異型p53)を用い実験を行った。1.アポトーシスを指標とし重粒子線照射単独ならびに重粒子線+抗癌剤併用において検討した。アポトーシス出現率はDNA断片化率の測定により求めた。重粒子線照射は1,3,5Gyを用い線量依存性を確認した。また照射後時間による影響は照射12,24,48時間後に検討を行った。2,細胞周期の変動すなわちG2ブロックを指標に重粒子線単独ならびに重粒子線・抗癌剤併用後、24、48時間後に検討を行った。 結果:重粒子線・エトポシドの併用で1.炭素線照射後のアポトーシス出現が24時間後に最も多く認められ、線量依存性が認められた。しかし重粒子線単独、重粒子線+シスプラチン、重粒子線+エトポシドいずれの群においてアポトーシス出現頻度に差異は認められなかった。よってエトポシドによる増感効果の機序はアポトーシス以外の細胞死によることが推測された。2.G2ブロックはいずれの細胞においても線量依存性に認められたが、重粒子線単独群、重粒子線+エトポシドもしくはシスプラチン群の間に差異は認められず増感効果を説明することはできなかった。 結論:以上の結果よりDNA架橋形成を引き起こすシスプラチンでは、DNA二重鎖切断という観点から見ると重粒子線に併用してもX線の場合と異なり、増感の余地はない可能性が考えられるが、一方エトポシドの場合はトポイソメラーゼの阻害剤であるため、DNAの高次構造修復に関連することから、X線と異なる相互作用機序で相加効果以上の効果が認められた可能性がある。次年度は遺伝子レベルで重粒子線と抗癌剤の使用について検討する。
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