下肢静脈瘤の原因は大伏在静脈や小伏在静脈の逆流であり、根本的な治療法はそうした逆流血管を閉塞することである。現在、大小伏在静脈の閉塞法として最も一般的な方法はストリッピング手術である。しかしながらこの手術は下半身麻酔が必要で1週間程度の入院を要する。鼠径部、膝部に切開痕も残り整容的にも好ましくない。手術に代わる低侵襲治療法として、血管内でレーザーを照射し閉塞させる方法が提唱されている。しかしながら定まった方法は無く、それぞれが独自のやり方で行っている。 今までの研究で、血管内レーザー照射により静脈は血栓により直ちに閉塞すること、2週間後には微細な再疎通の可能性があること、大きな副作用は無いことを報告した。これをもとに病院の倫理委員会の承認を経て臨床応用を開始した。 方法は超音波ガイド下に大伏在静脈を膝部で穿刺しガイドワイヤーを挿入する。さらに5Fカテーテル、レーザーファイバーを順次挿入する。静脈周囲を局所麻酔しレーザー照射を開始する。波長は810nm、出力は14W、毎秒3mmの範囲とした。また照射後に圧迫パッドをあてたものと、あてなかったもので副作用の出現頻度を比較した。 下肢静脈瘤17肢にレーザー照射行った(圧迫パッドなし:10、あり:7)。結果、全例で大伏在静脈は完全閉塞した。副作用として内出血と引きつれ感が見られた。内出血出現率は、圧迫パッドなしで80%、圧迫パッドありで14%と有意に減少した。引きつれ感は圧迫パッドの有無に関係なくほぼ全例に見られた。 これらの初期臨床経験、および副作用減少のための工夫の結果は、血管内治療学会(2005年7月、東京)、Cardiovascular and Interventional Radiological Society of Europe(2005年9月、ニース)、日本画像医学会(教育講演、2006年2月、東京)で発表した。
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