中等症以上の下肢静脈瘤に対する一般的根治療法はストリッピング手術だが、静脈内レーザー照射はストリッピング手術に代る低侵襲根治療法として注目されている。血管の閉塞はレーザー照射による静脈壁損傷と、それによる血栓性閉塞である。 今回、動物実験にて、レーザー照射後の血管の圧迫が血管の閉塞状態に及ぼす影響を検討した。雌豚(体重40kg)6頭を用いて、全身麻酔下に右側腹壁静脈を露出、穿刺し、カテーテルシースを挿入しレーザー照射を施行した。照射出力は10W、連続照射とした。レーザー照射後、腹部をコルセットにて圧迫固定後、2週間経過を観察した。結果は、腹壁静脈は全例で閉塞し、肺塞栓の発生は無かった。照射された血管には、照射後に圧迫を行わなかった場合と比較して、より強固な血栓が形成され、micro-canalによる再開通が減少する可能性が示唆された。 引き続いて臨床応用を行った。大伏在静脈由来の下肢静脈瘤患者に対して、大伏在静脈の血管内レーザー照射による治療を行った。照射後に弾力ストッキングのみを着用した場合と、レーザー照射した大伏在静脈に沿って圧迫パッドを弾力ストッキングの下に置いた場合を比較検討した。結果は、両群間で血管閉塞率には差は無かったが、術後の皮下出血の出現頻度は圧迫パッドを用いた場合の方が低かった。その他には大きな合併症は無かった。引き続き、照射出力が14Wと10Wの場合を比較検討した。結果は、両群間で血管閉塞率には差は無かったが、術後の皮下出血の出現頻度は10Wの場合の方が低かった。今回検討した圧迫パッド併用低出力照射法は、合併症が低頻度でかつ強固な血管閉塞が得られる可能性が示唆された。
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