研究概要 |
シグマレセプターは、種々の腫瘍細胞に高密度に発現し、腫瘍の形成や細胞分裂に大きく関与している。また、シグマレセプター作用薬剤は、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、腫瘍細胞増殖抑制作用を持っことが明らかとなってきた。従って、腫瘍細胞に過剰に発現するシグマレセプターは、これを分子標的とする新たな作用機序を持つ腫瘍の新規治療薬ならびに診断薬開発のターゲットとして有望であると考えられる。 現在、分子イメージング用放射性診断薬剤の標識用放射性同位元素として、F-18, C-11などのポジトロン放出核種、ハロゲン元素であるI-123、金属性放射性核種であるTc-99m, In-111など様々な放射性同位元素が使用されている。これら核種の中で、Tc-99m, In-111などの金属性放射性核種は、物理的特性に優れている上に、臨床の場における繁用性に特に適していることから、これら放射性同位元素標識分子イメージング薬剤の開発が熱望されている。 そこで本年度は、臨床使用に適した金属性放射性同位元素標識分子イメージング薬剤を新たに開発することを計画し、新規化合物のドラッグデザインおよび合成をおこなった。具体的には、これまでに検討してきたリード化合物に、金属性核種であるTc-99mと安定な結合を可能にするキレート形成部位を導入した新規化合物を合成した。このキレート形成部位はMAG3の部分構造と同じW_3S1型配位子構造をもっており、本年度の検討の結果、Tc-99mと安定なキレートを形成してリード化合物を効率よく標識できることを確認した。
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