研究概要 |
強度変調放射線療法(IMRT)により肉眼的腫瘍体積(GTV)と臨床標的体積(CTV)の1回線量を変える標的体積内同時ブースト(simultaneous integrated boost ; SIB)法を行った悪性神経膠腫12例の治療成績を解析した。線量分割は、GTVには1回2.5Gy、周囲CTVには1回2.0GyのSIB法で合計70Gyの照射を5.6週で照射した。急性障害による休止もなく、また脳壊死などの晩期神経障害もなく、SIB法は安全に実施できた。12例の生存期間中央値は19ヵ月、2年生存率は43%と比較的良好な生存率が得られたが、最終的には全例が脳内再発し、GTV再発は8例、周囲CTV再発が2例、照射野外の脳内再発が2例であった。以上よりこの線量分割(70Gy/28回)では、悪性神経膠腫の局所制御は不十分で、さらなる1回線量の増加(>5Gy)が必要と考えられた。 耳下腺線量低減を目的としIMRTで全頸部照射した頭頸部腫瘍41例(上咽頭15例、中咽頭14例、下咽頭12例)を対象とし、その唾液腺障害の程度と再発形式を検討した。GTVには60-70Gy(中央値68Gy)の照射を行ったが、対側および同側耳下腺への平均線量は24Gyおよび30Gyに軽減できた。IMRT後3-4ヵ月での唾液腺障害は、58%の症例で軽度の障害(grade0,1)にとどまり、特に耳下腺体積の大きな患者では唾液腺障害が軽度であった。再発形式としては原発腫瘍の残存・再発が8例に見られた。うち6例はGTV中心から再発したが、2例の上咽頭腫瘍は計画標的体積(PTV)辺縁での残存・再発であった。頸部リンパ節残存・再発は5例に見られ、再発の2例はPTV辺縁再発であった。IMRTでは唾液腺障害の低減が可能であるが、PTV設定には十分注意が必要である。 以上2つの成果は第13回ヨーロッパ癌学会で発表した。
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