研究概要 |
はじめに:同種血輸血が患者の癌の再発を促すのではないかという報告がある。しかしながら、その機序については、いまだ明らかにされていない。 目的:同種血輸血、自己血輸血が腫瘍増殖に影響を及ぼすか否か、自己血輸血において保存期間が腫瘍増殖に影響を及ぼすか否か、輸血による免疫変調作用の機序の解明を目的に研究を行った。 方法:マウスC57BL/6Jの背部にB16 melanoma cellを1×10^5個を皮下注し、その後血液の種類を変え、次の3つの実験を行った。実験1:麻酔後下大静脈より採血し,ACD-A液を10:1の割合で加え30分以内に輸血。実験2:採血後ACD-A液を加え人の貯血用プラスチッバッグに入れ4℃で2週間保存したものを輸血。実験3:実験2の保存全血を遠心分離し,その上清を0.2μmのフィルターを通し細胞成分を取り除いたものを輸血。15日後マウスを犠牲死させ腫瘍重量、体積を測定した。 結果:新鮮血輸血では同種血でコントロールに比べ有意に腫瘍重量、体積が増加した。保存全血では同種血のみならず自己血群でもコントロールと比べ有意に腫瘍が増大した。保存血上清輸血では同種血群が自己血、コントロール群に比べ有意に腫瘍が増大した。 考察:すべての同種血で腫瘍が増大し、上清成分でも腫瘍増大効果があったことから保存期間中に生じた可溶性因子が腫瘍因子の一つであると考えられた。輸血による免疫変調物質の同定および作用の機序の解明には至らなかった。
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