研究概要 |
我々は食道癌のSEREXスクリーニングによりユビキチン結合酵素E21(ubiquitin-conjugating enzyme E21、以下UCE-E21)を同定した。SEREXクローンにはしばしば発がんに密接に関与する遺伝子が含まれるので、この遺伝子の機能を調べるためにそのvariant clone AK093616を入手した。まず、この遺伝子をras-NIH3T3細胞に遺伝子導入し、薬剤感受性を調べたところ、エトポシド、ビンクリスチン、ミトキサントロン等の抗癌剤に対して感受性になった。UCE-E21の標的分子の一つとしてトポイソメラーゼが示唆されているが(Mao et al.,PNAS,97,4046,2000)、エトポシドがこの酵素を阻害することと関連していると考えられる。また、それらの薬剤感受性の全体のパターンをDSPA法(Hiwasa et al.,FEBS Lett.,552,177,2003)により相関解析したところ、UBE21導入細胞の薬剤感受性パターンはhTERT、HDAC1やがん遺伝子STMNの導入細胞の薬剤感受性パターンと正の相関を示し、がん抑制遺伝子であるp16、APC、PTEN、C/EBP、Glucocorticoid-receptor等の導入細胞の薬剤感受性パターンと負の相関を示した。即ち、UCE-E21の発現の結果、これらの分子が変動して発がんが促進されていると推定された。UCE-E21の他の標的分子としてRanGAP、COUP-TF1、HDAC、Glucocorticoid-receptor、Bcl-2、lamin等も示唆されているが、この中でDSPA解析により確認されたのはHDAC1とGlucocorticoid-receptorであった。即ち、UCE-E21はこれらの分子の分解を制御して発がんを促進するために高発現し、その結果、自己抗体が出現するメカニズムが考えられる。
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