研究概要 |
治療用サイトカインを導入した樹状細胞(DC)投与は癌免疫療法における有望な選択の1つと考えられているが、その臨床応用には安全性に対する検討が必要である。特に生体内に投与されたDCがどのような挙動を示すかは十分に解析されていない。そこで、前臨床試験として治療遺伝子導入DCの特性評価ならびにマウスを用いた投与DCの体内動態を追跡するシステムを立ち上げた。 治療遺伝子には、抗腫瘍免疫反応を誘導するマウスInterleukin-12(mIL-12)を選択し、発現遺伝子導入ベクターとしてアデノウイルス;Ad-mIL-12を使用した。一方、導入細胞となるマウス未成熟樹状細胞(m-iDC)はマウス大腿骨から採取した骨髄細胞をマウスGM-CSF存在下にて誘導した。このm-iDCを含む調製細胞にAd-mIL-12を遠心操作によって感染させ、得られた遺伝子導入樹状細胞(mIL-12-iDC)の表面抗原解析ならびに細胞培養上清中のmIL-12タンパク量の測定を行った。その結果、CD80,CD86の発現維持が認められ、さらに培養上清中にmIL-12を確認することができたことから、このmIL-12-iDCが免疫賦活細胞として適応可能なものであることが示された。 次に、このmIL-12-iDCを正常マウス肝臓に局所投与し、同一個体から血清生化学的検査値、脾臓重量、骨髄有核細胞数、血清中mIL-12濃度を比較したところ、無処置及び開腹処置との有意差は認められなかった。さらに投与DCの体内動態評価にアデノウイルスDNAのE4領域を標的としたリアルタイムPCR法を確立し検討したところ、一部のマウスの肺・脾臓サンプルからウイルスDNAが検出され、肝臓に投与したmIL-12-iDCが血流を介して他臓器に到達していた可能性が示唆された。本システムは治療遺伝子を導入した細胞を用いる遺伝子治療において、その安全性を検討する場合に有効な手段になりうると考えられた。
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