研究概要 |
[目的]多くの臨床試験の結果に基づき原発性乳癌に対する標準的補助化学療法が確立しつつある。しかし、標準的化学療法施行中または終了後短期間で再発が顕性化する症例もしばしば経験され、より個別化した薬剤の選択が望まれている。より有効な薬剤選択の指標となる因子を探索することを目的に解析を行っている。 [対象と方法]これまでに、信州大学医学部付属病院乳腺内分泌外科で手術を施行した原発性乳癌40例から手術時に採取した乳癌組織の、Epirubicine(EPI),Paclitaxel(PTX),Cyclophosphamide(CPA),5FUに対する感受性をHistoculture drug response assay(HDRA法)を用いて判定した。HDRA法にてEPI,PTX,CPA,5FUに対するinhibition indexを測定し感受性の指標とし、組織型や種々のバイオマーカーとの相関の解析を行っている。 [これまでの結果]組織型では乳頭腺管癌10例、充実腺管癌5例、硬癌22例、その他3例であったが、EPIに対する感受性は硬癌で有意に高く、充実腺管癌では有意に低かった(p<0.05)。また、Estrogen receptor(ER)陰性の乳癌で、CPAおよび5FUに対する感受性の有意な増加を認めた。Progesteron receptor(PgR)、HER2、Histological gradeと解析した4薬剤に対する感受性との間に相関は認められなかった。 [考察]まだ術後の観察期間が短いため、これまでのところ解析結果と患者の予後との関連を解析するには至っていないが、幾つかのバイオマーカーはHDRA法での抗癌剤感受性の予測因子になり得ると推測される。今後は、p53,P-glycoprotein,Topo IIα,YB-1やMRP1などの発現と感受性試験との相関について解析を行う予定である。
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